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産婦人科(婦人科)では、生理痛がひどい、経血の量が多い、PMS(月経前症候群)、おりものの異常(色が変、量が多い、においがする)、性感染症、妊娠、不妊症などについての相談ができます。基本的にどんな年齢の人でも受診することができ、中学生や高校生で生理についての相談に行く人もたくさんいます。必要に応じて痛み止めや低用量ピルの処方を受けられます。HPVワクチン(子宮頚がんワクチン)を受けることもできます。
泌尿器科では、おしっこすると痛い、おしっこの回数が多い、尿漏れがある、おねしょ、外陰部に痛みがある、外陰部にイボがある、ペニスについての悩み(包茎、大きさやかたち、勃起や射精ができないなど)、陰のうについての悩み(精巣がはれている、痛いなど)、性感染症、不妊症などについて相談することができます。赤ちゃんから高齢者まで、どんな年齢の人でも受診可能です。必要に応じて尿検査や超音波の検査を受けることがあります。飲み薬や塗り薬の処方を受けられます。
いま、国内で性感染症の「梅毒」が増えています。一度は根絶したと言われるほど減っていましたが、ここ数年で急増しました。気になる性感染症は梅毒だけではありません。「クラミジア」や「淋菌感染症」も、多くの人が感染しています。医師で性感染症専門家の田沼順子さんは「誰もがかかる可能性があるし、みんなで防がないと防げない病気」といいます。もしも自分が感染したら、どんな症状が出るのか? 治せるの? どうやって治療するの? 性感染症について、田沼さんに聞きました。
若い世代にも広がる梅毒・クラミジア
梅毒
梅毒は「トレポネーマ」という細菌によって引き起こされる感染症です。主に性的な接触によって感染します。性器の粘膜の接触だけでなく、口や肛門からも感染します。
感染すると、最初は菌が侵入した場所、性器や口、肛門などに発疹ができます。そこで「おかしいな」と気づくケースもありますが、自然に消えてしまってそのままにしてしまうケースもあります。その後全身や手のひらに赤く目立つ発疹ができるのですが、それも人によっては消える場合があります。そこで放っておくと、病気が進行してしまい、内臓に腫れ物ができるなどの症状が出ます。
発疹が出ても消えてしまうため、患者さん自身が梅毒だと気づくのはとても難しいです。また「ミミッキングディジーズ」(Mimicking Disease/物まねする病気)と呼ばれるほど、他の病気に似た症状が多い病気です。感染したかどうか自分で判断することはほぼ不可能なので、ひょっとしてと思ったら病院や保健所で検査を受けることがとても大切です。
感染したままにしておくと、性器の痛みなどだけではなく、まれに脳に細菌が入って障害が出たり、視力が落ちたりします。また女性の場合は不妊症になったり、妊娠しても赤ちゃんに梅毒がうつって健康に生まれることができなくなったりと、とても深刻な状態になることがあります。妊娠中の梅毒はいま増えており、対策が必要です。
グラフを見るとわかるように、20代の間でも広がっています。10代も決して少なくありません。
治療には抗生物質を使用します。治療期間は感染してから早い時期であれば2~4週間程度ですが、感染してから時間がたっている場合、2~3カ月程度かかることもあります。
クラミジア
クラミジアも「クラミジア・トラコマチス」という細菌が引き起こす病気です。
クラミジアは特に無症状で、気づかないことが多い病気です。少ない自覚症状のうちの一つが、排尿するときの痛みです。トイレが近くなる人もいます。ただ、やはり自覚症状のない人も多く、婦人科検診など病院を受診したときにお医者さんに指摘されるケースも多いです。
感染したまま長い期間がたつと、女性も男性も不妊症の原因となることがあります。
治療には抗生物質を使用します。
淋菌感染症
梅毒・クラミジアのほかに主な性感染症として「淋菌(りんきん)感染症」があります。こちらはクラミジアよりも「尿道炎」の症状が強く出るため、気づきやすいかもしれません。排尿時に強い痛みを感じたり、尿が濁ったりします。
ただ、やはり淋菌感染症も、無症状の人は一定数います。治療には抗生物質を使用します。
コロナ禍の外出自粛や感染症対策で多くの感染症は減少しましたが、クラミジアと淋菌感染症が減ることはありませんでした。コロナによる制限がなくなったいま、さらなる感染増加が予想されています。
HIV/エイズ
性感染症と聞いて、HIV/エイズを連想する人もいるかもしれません。
エイズは、HIVというウイルスに感染した後に発症します。HIVに感染したままで治療しないと免疫力が低下し、「ニューモシスチス肺炎」や「サイトメガロウイルス感染症」、「結核」など、健康な人であればかからないような病気「日和見(ひよりみ)感染症」にかかるのが特徴です。免疫が落ちているので悪化し、重症になりがちです。
HIVは他の性感染症と同じように性行為時などに、体液を介して感染しますが、感染力は比較的弱いです。ただ、腟、肛門の粘膜に傷がついていた場合などは、そこからウイルスが入りやすくなります。
エイズを引き起こすHIVは、いったん感染するとからだから完全になくすことができませんが、きちんと抗ウイルス薬を飲むことで症状を出さず、日常生活を送ることができます。医師と相談しながら、子供を持つこともできます。また発症した後も、薬で病気の進行をある程度コントロールすることができます。
多い「無症状」……どうやって気づけばいいの? 治療法は?
「彼氏の元カノの元カレを、知っていますか?」
今から20年近く前、HIV/エイズ予防の広告に添えられていた言葉です。
この言葉は、すべての性感染症に当てはまります。
いまの恋人の前の、そのさらに前の恋人たちの誰かが性感染症にかかっていたら、あなたも性感染症に感染する可能性があり、それは異性間でも、同性間でも同じです。性感染症は、決して特別な病気ではありません。誰もが感染する可能性があるものです。
では、どのようにして予防したり、感染に気づいて治療したりすればいいのでしょうか。
性行為自体をしなければ感染の可能性は限りなく低くなりますが、性行為がある場合、有効な予防方法はコンドームを使用することです。
ただ、コンドームを使っても完全に予防できるとは限りません。
ご説明したとおり、性感染症は自覚症状がない場合も多いですが、どんな人に自覚症状が出て、どんな人が無症状になるのかは、まだ解明されていません。
完全に予防することは難しく、自覚症状がないかもしれないなか、私たちにできることは「症状が重くなる前に気づき、治療を受けること」です。
性行為をした後に何となく気になるとき、性器がムズムズするとき、別の検査や診察で産婦人科(婦人科)や泌尿器科を受診したとき……。そんなときに性感染症の検査を受けてみましょう。
病院でなくても、保健所で匿名かつ無料で検査を受けることもできます。
感染後早めに気づけば、多くの性感染症は治療することができます。
検査の頻度ははっきりと決められていませんが、性生活のある人は年に1度は、検査を受けてみてもいいかもしれません。
多くの性感染症は、薬を使うことで治すことができます。 梅毒やクラミジア、淋菌感染症は抗菌剤(抗生物質)が処方されます。注射の場合もあれば、飲み薬の場合もあります。
どの性感染症の治療でも、大切なのは医師に指示された薬の飲み方をきちんと守ることです。
自分の判断で飲むのをやめたり量を変えたりすると、薬が効かなくなってしまうこともあるからです。
薬を飲み終わったあとも自分で受診をやめず、医師から「もう大丈夫」と言われるまで受診を続けましょう。
性感染症は誰かが悪いわけではない。みんなで防ぐことが大事
今では薬を正しく飲めばコントロールできるHIV/エイズですが、今から約30年前、この感染症が世界で広まったころは、未知の病気への不安と情報不足から、パニックが起こりました。
日本国内で最初に感染した人の住所や名前を突き止めて特定し、週刊誌などでさらそうとするなど、差別と偏見による混乱が起きたのです。
この状況、見覚えがありませんか? そう、新型コロナウイルス感染症が広がった初期のころ、世界中で起きたことです。
新型コロナ感染症と同じように、性感染症は誰しもがかかりうる病気です。誰々のせい、とか、この仕事をしている人のせい、などと決めつけられるものではないですし、決めつけるべきではありません。逆にいうと、どんな年代、仕事、性的指向の人でも、みんなで予防し、検査をすれば、感染拡大を防ぐことができるのです。そして、治療方法もきちんとあります。
早期検査、早期治療をすることはあなたのためでもあり、みんなのためでもあります。
心配なときは身近な大人に相談したり、保健所などの匿名の検査を利用したりしてみてください。
※性感染症の予防法などについてはこちらも参考にしてください
◯東京都性感染症ナビ
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/seikansensho/index.html
(性感染症の症状や予防方法、検査情報等がわかるサイトです)
◯東京都HIV検査情報Web
https://tokyo-kensa.jp/
(都内のHIV検査の情報がわかるサイトです)
◯東京都HIV等検査予約センター
電話番号 050-3801-5309
受付時間 10:00~20:00(年末年始を除く)
(新宿東口検査・相談室、多摩地域検査・相談室等の検査予約ができます)