妊娠

カレンダーを見て話し合う男女

「妊娠したかも……」どうしたらいい?

知っておくべき選択肢と相談先

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この記事でわかること
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産婦人科(婦人科)では、生理痛がひどい、経血の量が多い、PMS(月経前症候群)、おりものの異常(色が変、量が多い、においがする)、性感染症、妊娠、不妊症などについての相談ができます。基本的にどんな年齢の人でも受診することができ、中学生や高校生で生理についての相談に行く人もたくさんいます。必要に応じて痛み止めや低用量ピルの処方を受けられます。HPVワクチン(子宮頚がんワクチン)を受けることもできます。

妊娠は、妊娠することを希望していた場合でも、意図しない妊娠であっても、その後の人生設計に大きな影響を与えます。妊娠したかもしれないと思ったら、まずは、妊娠検査薬で自分で検査をするか、産婦人科(婦人科)を受診しましょう。もし妊娠しているとわかったら、産むか、産まないか、子供を自分たちで育てるか、施設や里親などほかの人に育ててもらうかなどを決める必要があります。判断が難しいことも多いですが、いろいろな人に相談したり、専門機関の相談窓口を利用したりすることもできます。どのような選択肢があり、どのように今後のことを決めていくといいのでしょうか。

「妊娠しているかも?」と思ったら、まずやることは?

妊娠の可能性があると思った場合の対応は、思い当たるセックスから経過した日数によって異なります。まず、性行為から72時間以内で、妊娠を望んでいないのであれば、「緊急避妊薬」を服用するという方法を取ることができます。

緊急避妊薬は、避妊に失敗したケースや、性暴力を受けて意図しない妊娠をしてしまう可能性がある場合に、妊娠を前段階で防ぐ目的で病院で処方してもらう薬です。飲むのが早ければ早いほど、効果は高くなります。入手方法や費用の目安などは本サイトのStory「避妊に失敗したと思ったら、どうすればいいの?」を参考にしてください。

現在国(厚生労働省)では、将来的に予期せぬ妊娠の可能性が生じた女性が処方箋なしに緊急避妊薬を適切に利用できる仕組みを検討するため、薬局での販売方法などについて情報を集めるための調査研究を行っています。調査研究の一環として、一部の薬局での販売を行っています。詳しくは次のリンク先をご覧ください。

試験販売について:https://www.pharmacy-ec-trial.jp/
※取扱薬局のリストは、上記リンク先の一番下の確認事項をチェックすると、閲覧できます。

妊娠すると生理は止まりますが、別の理由で生理が遅れることもあります。妊娠しているかどうかは「妊娠検査薬」を使うことでわかります。ただ、心当たりのあるセックスから約3週間たつまでは、検査しても正しい結果はわかりません。その間は、一時的な体調の変化やネット上の情報などに振り回されずに、検査ができるタイミングが来るのを待ちましょう。けっしてあせらずに、妊娠していた場合にはどうするのかを冷静に考えることが大切です。

妊娠検査薬はドラッグストアで買え、棒の先に尿をかけるだけで簡単に検査することができます。陰性(妊娠していないという結果)が出ても、生理がくるまでは1週間ごとに検査をくりかえしましょう。

妊娠検査薬で陽性(妊娠の可能性があるという結果)になった場合や、検査結果にかかわらず不安な場合は、なるべく早めに産婦人科を受診してください。産婦人科では、おなかの中をエコーで見るなどして、妊娠しているかの確定診断を行います。人によっては「異所性妊娠(子宮外妊娠)」といって、子宮以外の場所で妊娠していることがあり、緊急での治療が必要となることもあります。

性行為から妊娠がわかるまでのフローチャート

妊娠したとわかった場合の選択肢 

妊娠しているとわかったら、産むか、産まないか、産むと決めたなら子供を自分たちで育てるか施設や里親など他の人に育ててもらうかを決めなければなりません。決めるうえで悩む場合は、いろいろな人に相談したり相談窓口を利用したりすることもできます。

産まないと決めた場合

子供を産まないと決めた場合は中絶をすることになりますが、この選択肢にはタイムリミットがあります。日本では妊娠21週目(21週と6日)まで中絶をすることが可能で、処置が早ければ早いほど、からだへの負担が小さいです。これは、母親のからだを守るためにつくられた「母体保護法」という法律で決められていることです。

※妊娠週数の数え方
(※妊娠週数は、最後にきた生理の初日を0週0日として数えます。そのため「セックス」をした日がすでに妊娠2週ごろとなり、「セックスしてから生理がこない」と気づいたときには、少なくとも妊娠4週や5週にはなっています)

中絶の方法は妊娠週数によって変わります。
妊娠9週0日までは「経口中絶薬」を使う方法があります。日本ではこれまで認められていなかったのですが、2023年4月に承認されました。指定された医師のもとで薬を飲んで人工的に中絶を行います。世界保健機関(WHO)も安全な方法として推奨している方法です。ただし24時間は経過を観察する必要があり、対応できる医療機関は現時点では限られているため、9週0日までであっても、多くの場合は次に紹介する掻把(そうは)術や吸引術が行われます。経口中絶薬をつかった中絶にかかる費用は10万円程度です。

妊娠12週未満(11週6日)までに行える方法は、掻把(そうは)術や吸引術で、器具を使って子宮内の組織を外へ取り出します。日帰り手術であることが多く、費用は10万から20万円程度です。

妊娠12週から22週未満(21週6日)までは、掻把(そうは)術や吸引術を使うこともありますが、腟に薬をいれて人工的に陣痛をおこし、出産をうながす方法を使うことが多いです(中期中絶手術)。数日間の入院が必要となり、費用は約20万円から50万円程度かかります。

妊娠22週目を過ぎると中絶することはできません。

これらの中絶の方法はほとんどの場合、健康保険の適用外で、未成年は保護者などの承諾が必要となることが多いです。

産むと決めた場合

産むと決めた場合には自分たちで子供を育てる方法と、施設に預けたり、養子縁組などをしたりしてほかの人に育ててもらう方法があります。若い年齢での出産、育児は経済的な事情や、学校に通っているなどの理由で難しいこともあるので、シングルで育てる場合もパートナーと育てる場合も、親や周りの人たちのサポートを得ることが大切になります。

自分では子供を育てられない時には、養子縁組など他の人に育ててもらうという方法や、自分が育てられるようになるまで、施設や里親のもとに期間限定で子供を預かってもらうという方法があります。どの方法であっても、子供の将来の幸せを考えた場合の選択肢です。

以下に、産むと決めた場合、産まないと決めた場合に取りうる主な方法を示しています。

妊娠発覚から産むor産まないの選択のフローチャート

最終的に決めるのは妊娠した本人

妊娠しているかどうかを知りたい時や子供を育てられるか不安な時は、誰に相談すれば良いのでしょうか? 

妊娠に関する悩みがあると、まずネットで検索などをして調べることが多いと思いますが、SNSやネット上には間違った情報もよく載っているので、信頼できる専門機関のサイトや相談先を参考にしてみてください。東京都の「妊娠相談ほっとライン」や「わかさぽ(とうきょう若者ヘルスサポート)」では、電話やメールなどによる相談を無料で受け付けていて、さまざまな不安や悩みに対応しています。またお住まいの区市町村の保健センターでも相談を受け付けています。

■東京都 妊娠相談ほっとライン 
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo//sodan/ninshin-hotline.html

■とうきょう若者ヘルスサポート(わかさぽ)
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo//sodan/wakasapo.html

■都内の保健センター一覧
https://tokyo-ninshin.net/soudan.html

また性暴力を受けたケースでは、たとえ妊娠していなかったとしても、精神的なケアが必要となる可能性があります。ひとりで抱え込まずに、「東京都性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援センター」などに相談してみてください。

大事なのは、自分ひとりで抱え込まないこと。不安や悲しみをためこまずに、他の人に聞いてもらうことも必要です。病院の先生や自治体の担当者、保健師や助産師など、いろいろな人に相談しながらどのような選択をするか考えてみてください。

そして最終的に決めるのは、あくまでも妊娠した本人です。相手が「おろして」と言ったから中絶する必要はなく、親の意見に従わなければいけないわけでもありません。法律の範囲内にはなりますが、産むか産まないかは、自分で決め、その選択を尊重される権利があります。

テーブルを囲んだ4人の家族が妊娠出産について話し合う様子

妊娠していなくてよかった、だけで済ませないために

妊娠ではなかったことが検査でわかったとしても、安心しているだけで終わってはいけません。「妊娠しているかも」と思っている期間、不安な気持ちでいる人が多いと思います。同じ思いをしないため、同じことを繰り返さないために、これから何をすべきかを考える必要があります。避妊に失敗したのなら、本サイトのStory「正しい避妊、本当に知っていますか?」などを確認して、パートナーと2人でしっかり話し合ってください。

特に男性は、もしパートナーが妊娠したら他人ごとではなく、どんな将来の選択肢があるのかを知っておかなければなりません。出産するか中絶するか、子供をどうやって育てるか一緒に考え、妊娠した人の選択を尊重し、どんな選択であっても経済的サポートや精神的サポートを担ってください。