いじめのこと

ずっといじめられていた 「景井ひな」だから届けられること

いま、つらいあなたへ 頑張らなくていい 自分を守って

Interview
暴力のこと

公開日:2023年10月27日

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Profile
TikTokクリエイター、タレント 景井ひな
かげい・ひな 1999年、熊本県生まれ。2019年に友人の勧めでTikTokを始め、わずか10日間でフォロワーが10万人を突破する。現在のフォロワーは1000万人超。2023年のフランス・カンヌ国際映画祭では「世界の7人のクリエイター」の一人に選ばれ、現地に招待された。

景井ひな いじめ インタビュー

TikTokクリエイターとして多くのファンやフォロワーから愛される景井ひなさん(24)は、子供のころずっといじめを受けていました。学生時代は誰も信じられず「ひとりで生きていこう」とまで絶望していたという景井さんがいじめを乗り越えられたのは、あることがきっかけだったといいます。

私の動画を見て笑顔になってくれたら いじめ受けた経験も公表

――景井さんはSNSやテレビで華やかに活躍されている一方、ご自身が受けてきたいじめの体験を公表されています。なぜ、あえて公表しようと思ったのでしょうか。

私がTikTokクリエイターとしてやっていこうと思ったきっかけが、動画を見てくれたフォロワーの方々からの声でした。「今日も一日がつらかったけど、ひなちゃんの動画を見たら少し元気になれた」というメッセージがとてもたくさんあったんです。嫌な環境にいることを私が変えることはできないけれど、私の動画を見ているときだけでも笑顔になってもらえたら、と発信を続けることにしたんです。

そうと決めたなら、自分のいじめの経験も言葉にしたほうが良いんじゃないかなと思うようになりました。いじめを受けた経験があるからこそ、現在苦しんでいる人にちゃんと届けられる言葉があると思うんです。発信する立場になったからこそ、自分のつらかった経験を強みにできると感じています。

景井ひな いじめ インタビュー

――いじめを受けていた当時、その体験をどう乗り越えたのでしょう。

私の場合、いじめを受けていた期間がすごく長いんです。

保育園のときは、自分のクレヨンやお菓子をとられ、小学生になると仲間外れにされ、中学生のころは制服や体操服、部活の道具、タオルなどありとあらゆるものがなくなりました。高校でも、初日から、机をあからさまに避けられたり、悪口が書かれた手紙を教室内で回されたり……。何もしていないのに、と思っていましたが、でもきっと、何も反応しない私の態度が気に入らなかったんだと思います。

担任の先生に相談したこともありました。生活に必要なものがどんどんなくなって、もうどうしようもない……と相談に行ったのに、返ってきた言葉があまりにも軽い、ありえないものでした。「ひなちゃん可愛いから、ファンが制服をとっていっちゃったんじゃない?」って。

私にとっては笑いごとじゃない、深刻な状況だったんです。その言葉を聞いて、もう誰も頼れないんだと自分から壁を作るようになりました。ひとりきりでも生きていける、と人を信じることを諦めるようになっちゃった。自分を守るために学校に行かなくなり、やんちゃな子たちと仲良くすることで、周りから攻撃されないようにとだけ考えていました。

乗り越えたと思えたのは、高校に入って初めて“友達”ができてからです。

それまでは、自分の限られた居場所を失わないようにと、普段の会話でもイエスともノーとも一切言わなかったんです。意見が違うからと仲間外れにされたら、いよいよ、自分が生きる場所がなくなると思っていました。

でも高校で3人だけ仲良くなれた子がいて。その子たちとだけは、「こう思う!」「違うと思う!」と言い合えたり、怒られたり怒ったりできた。人間関係ってこうやって築いていくんだと、高校生になってようやく知ることができました。いじめに気づいたその3人が、「やめなよ」といじめを止めてくれて……。ちゃんとした友達ができたのも初めてだったし、そこから高校生活がめちゃくちゃ楽しくなりました。

――もしあのとき、周りにこんな大人がいたら……と思うことはありますか。

相談にいったときに先生が、「なくなったものを一緒にさがそう」と動いてくれたら、一緒に何かしようという姿勢を見せてくれたら、少しは救われたかもしれません。私と同じ側に立ってくれた、と感じられる行動だけでも、力になったと思います。

景井ひな いじめ インタビュー

逃げるのは悪いことじゃない 好きなことを大切に、今を過ごしたっていい

――今この瞬間も、当時の景井さんと同じように「誰も信じられない」「大人に言ったって解決しない」と悩んでいる人に向けて、伝えたいことはありますか。

私は学校から逃げました。それによって、自分の身を守っていました。今、不登校で学校に行けていない方がいても、それが悪いなんてことは絶対にない。逃げることで自分が自分でいられるのなら、それでいいんだと思います。

10代のころは、「学校が世界のすべて」と感じるのが当然だと思います。学校での人間関係がうまくいっていないと、この先の将来もずっと同じなんじゃないかと思うかもしれません。

でも、全然そんなことはありません。

社会に出てから広がる世界がいっぱいあるし、友達もできるし、頼れる人にもたくさん出会える。学校でできた友達が一生の友達になるとは限りません。今の人間関係がすべてだと思わないで、嫌なら逃げてほしい。そして、自分を大事に守ってほしいです。

Message

みんなへのメッセージ

今がつらくて、もうすでに頑張っているみなさんに、「頑張って」という言葉をかけるのは違うのかなって思うんです。私も、「頑張って」と言われることが好きじゃない。だから頑張らずに、自分の好きなことを大切にしながら生きてほしい。それだけで、将来は広がっていくと思います。