性暴力

傷ついたハートを抱える2人の人物

性暴力被害――あなたは悪くない

もしあってしまったら、どうすればいい?

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暴力のこと
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この記事でわかること
関連する診療科

産婦人科(婦人科)では、生理痛がひどい、経血の量が多い、PMS(月経前症候群)、おりものの異常(色が変、量が多い、においがする)、性感染症、妊娠、不妊症などについての相談ができます。基本的にどんな年齢の人でも受診することができ、中学生や高校生で生理についての相談に行く人もたくさんいます。必要に応じて痛み止めや低用量ピルの処方を受けられます。HPVワクチン(子宮頚がんワクチン)を受けることもできます。

泌尿器科では、おしっこすると痛い、おしっこの回数が多い、尿漏れがある、おねしょ、外陰部に痛みがある、外陰部にイボがある、ペニスについての悩み(包茎、大きさやかたち、勃起や射精ができないなど)、陰のうについての悩み(精巣がはれている、痛いなど)、性感染症、不妊症などについて相談することができます。赤ちゃんから高齢者まで、どんな年齢の人でも受診可能です。必要に応じて尿検査や超音波の検査を受けることがあります。飲み薬や塗り薬の処方を受けられます。

精神科では、こころの症状や発達障害について診療を受けられます。長く続く気分の落ち込み、物事に集中できない、死にたくなる、衝動がおさえられない、といったことを相談できます。また、学校に行きたいのに行けない、リストカットなどで自分を傷つけたくなる、ネットやゲームから離れられず他のことができなくなる、市販薬などを大量に服薬したくなるなど、自分ひとりでは解決するのが難しいことへの手助けも受けられます。どんな年齢の人でも受診可能ですが、小学生、中学生、高校生は児童精神科を受診することで、より年齢や発達に合わせた専門的な診療を受けられます。医師や臨床心理士に自分の悩みや困りごとについて話すことができ、各種心理療法や必要があれば飲み薬の処方を受けられます。

性暴力は、被害を受けた人のからだだけでなく、こころも大きく傷つけます。被害を受けたことをなかなか言い出せない人も多いです。近年は性暴力を行う側への目も厳しくなり、法律も変わりました。被害者を支える人も、場所も増えています。どこから性暴力というのか。そして、もし被害を受けてしまったら、どうしたらいいのか。性暴力とトラウマケアが専門の藤森和美さんに聞きました。

お互いの同意がなければ、すべて性暴力です

最初に「性暴力」という言い方についてお話しします。昔はからだを触るなどの「強制わいせつ罪」のようなことを「いたずら」などと言って軽んじることがありました。いまでは「性被害」「性加害」などとも呼びますが、被害の深刻さをしっかり伝えるために、「性暴力」という言葉を使いたいと思います。

「性暴力」とひと言で言ってもさまざまなものがありますが、前提として「あなたもOK、私もOK」というお互いの同意、共通認識がないものは、すべて性暴力です。からだにふれるとき、性行為をするとき、からだのプライベートな部分の写真を撮るときなど……お互いにきちんと言葉で「いいよ」と確認したうえで行うようにしましょう。相手が「うーん……」と言葉を濁したり、あいまいに黙っていたりした場合、それは同意とは言えません。

最近は性暴力に対する社会の認識も厳しくなり、被害者を守ろうとする動きが強まっています。法律も改正されました。以前の「強制性交等罪」や「準強制性交等罪」は、加害者が被害者を暴行したり脅迫したり、薬で眠らせたりしていなければ無理やりに行ったとみなされませんでしたが、2023年7月に改正法が施行され、「不同意性交等罪」に名前が変更されて、同意がない性行為は犯罪になりました。

また、同意があれば性行為を行ってもいいとする「性交同意年齢」も、明治時代から続いてきた「13歳」という法律が変わり、16歳に引き上げられました。ただし13歳から15歳までの場合は、相手が5歳以上年上のときに限り、罪に問われます。たとえば15歳同士の場合は、罪に問われません。

家族、先生……身近な人、立場が上の人からの性暴力は多い 

性暴力というと、見知らぬ人から突然襲われるようなケースを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、実は自宅や学校など日常生活を送る場所で、家族や友達など身近な人から被害を受けることは少なくありません。親やきょうだい、塾や学校の先生など、立場が上の人からの加害も多いです。それは加害をする側が立場を利用して性暴力を行い、被害を受ける側に「嫌だ」と言えないようにするからです。力関係を利用して相手に「イエス」と言わせ、同意があるように仕向けることもあります。

これは、同意とは言えません。

性暴力被害というと女性が被害者と思われがちですが、男性も同じように被害にあいます。

男性の被害は、女性よりも声を上げにくい環境にあります。被害を受けたとき、肉体的な反応として勃起したことで自分を責めたり、被害を相談しても「ラッキーだったね、気持ちよかった?」などと言われて取り合ってもらえなかったりと、社会全体が男性の被害を小さく見たり、なかったことにしたりしてきました。しかし最近は、男性への性暴力が問題化するなど、社会の受けとめも少しずつ変わってきています。そして、男性が被害にあうことは決して恥ずかしいことでも、被害男性のせいでもありません。

「グルーミング」って?

「グルーミング」という言葉を知っていますか? 主に大人が未成年に対し、性暴力を行うために使う手段です。性行為を目的としていることを相手に隠して、優しくしたりプレゼントを贈ったりして心を許させ、コントロールして言うことを聞かせようとすることです。年齢や立場が上の人が未成年に相談事を持ちかけ、アドバイスをもらって「さすがだね、しっかりしている、あなたは大人だ」などと褒め、まるで対等の関係であるかのように錯覚させることもあります。

相手を褒めたりプレゼントを贈ったりして近づくことは、普通の恋愛でもあることだと思うかもしれません。違うのは、年齢や立場が対等ではないということです。年上の大人が、褒めて優しくする代わりに、まだ若いあなたにからだやこころを差し出させることは、決して本当の優しさや恋愛ではありません。本当にあなたを大切に思っている大人は、あなたに恋愛や肉体関係を求めません。

花を手渡す手

もしも被害にあってしまったら――あなたを守ってくれる大人はいます

望んでいないのに性的な行為を受けてしまったら、どうしたらいいのでしょうか。

最初にお伝えしたように、あなたが「嫌だな」と思っていたり、お互いにきちんと同意できていなかったりするのに相手が性的な行為をしてくるのは、性暴力です。

そして、どんなシチュエーションで起きたことでも、あなたは悪くありません。どんな服装をしていたとしても、あなたに落ち度はありません。

性暴力にあうと、ショックやパニックなどから「なかったことにしよう」とすることは、自然なこころの動きです。なかったことにして、いつもの日常生活を送ろうとする人もいることでしょう。ですが、こころの奥底に封じ込めたつらさは、月日が経ったある日、突然ふたを開けて顔を出します。そうなると、フラッシュバックが起きたり、こころがもっとつらくなったりします。過食嘔吐やリストカットなど、自分を傷つけることでこころを守ろうとする動きが出ることもあります。あえて性的に奔放な行動をして被害を「再演」し、自分は被害者ではないと思うことでこころを守ろうとすることもあります。

無かったことにするのではなく、こころとからだの治療をして、あなたを守ることが必要です。

大切なのは親など信頼できる身近な大人に相談し、治療やカウンセリングを受けることですが、親に相談できない人、周りに信じられる大人がいない人もいると思います。

そういうときは、性暴力にあった人を守るための場所に相談してください。

東京都性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援センターhttps://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/10jinken/hanzai/onestop/は、匿名・無料で相談を受け付けています。被害者の話を聞き、妊娠の可能性があるなど対処が必要な場合は病院の手配や、受診の付き添いもしてくれます。

電話で相談しづらい場合は、LINE相談があります。

(アカウント名「相談ほっとLINE@東京」https://lin.ee/EnSrqGv

ひとりで抱え込まず、まずは検索からでいいので助けを求めてください。

また合意なく性交をされてしまった場合は、緊急避妊薬の手配やからだの治療に加え、相手の責任を追及するときに備えて証拠を残すことも大切です。まずワンストップ支援センターや110番に通報し、その後、つらいですがシャワーは浴びず、着ていた服も捨てずに、他のものと交ざらないように取っておきましょう。体液など、からだについたものを拭いたティッシュやタオルなどがあれば、それらも保管しましょう。うがいもしないほうが望ましいですが、した場合は口から出した水を取っておきましょう。うがいの水が有力な証拠になったことも、過去にはありました。

相手を大事にするように、自分も大事にしよう

10代のころは楽しいこともある一方、成長の過程でからだもこころも不安定になります。特にこころはまるでジェットコースターのように激しく動き、つらく感じることもあります。そんな不安定な時期だからこそ、自分を大切にしてくれる人との人間関係をつくることが大事です。嫌なことを「嫌」と言ってもお互いに受け入れ合える人間関係を大切にし、相手を大事にするのと同じくらい、自分を大事にしてください。

※性暴力に関する相談窓口はこちらにもあります。

◯犯罪被害者等のための東京都総合相談窓口
https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/10jinken/hanzai/higaisyamadoguti/index.html

◯東京都児童相談所一覧
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/jicen/list.html

◯話してみなよ―東京子供ネット―
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/jicen//annai/keriyougo.html