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外科では、けが、骨折、やけど、腹痛、頭痛などの症状を相談することができます。必要に応じて必要に応じて尿検査、血液検査、超音波検査、レントゲン検査などを受けることもあります。病院やクリニックによりますが、手術を受けることも可能です。けがや骨折などは、整形外科のほうがより専門的な診療を受けられることが多いです。赤ちゃんから高齢者までどんな年齢の人でも受診可能ですが、赤ちゃんから中学生ぐらいまでの人の、心臓、肺、胃腸、腎臓などの病気で手術が必要な場合は、小児外科というよりこどもを専門的にみている科もあります。予防接種(ワクチン)を受けることもできます。
心療内科では、ストレスなど心理的なことが原因となって、からだの症状が出る「心身症」の診療を受けられます。具体的には摂食障害(拒食症や過食症)、過敏性腸症候群(ストレスによる便秘や下痢)、繰り返す頭痛、パニック障害(突然の息苦しさ、めまいなどが起こり、強烈な不安感におそわれる)などについて相談ができます。どんな年齢の人でも受診することができ、中学生や高校生ぐらいの年齢の人もたくさん受診しています。医師や臨床心理士に自分の悩みや困りごとについて話すことができ、各種心理療法や必要があれば飲み薬の処方を受けます。
精神科では、こころの症状や発達障害について診療を受けられます。長く続く気分の落ち込み、物事に集中できない、死にたくなる、衝動がおさえられない、といったことを相談できます。また、学校に行きたいのに行けない、リストカットなどで自分を傷つけたくなる、ネットやゲームから離れられず他のことができなくなる、市販薬などを大量に服薬したくなるなど、自分ひとりでは解決するのが難しいことへの手助けも受けられます。どんな年齢の人でも受診可能ですが、小学生、中学生、高校生は児童精神科を受診することで、より年齢や発達に合わせた専門的な診療を受けられます。医師や臨床心理士に自分の悩みや困りごとについて話すことができ、各種心理療法や必要があれば飲み薬の処方を受けられます。
誰もが、自分のからだやこころを傷つけられることはあってはなりません。教育的なしつけや指導のつもりであっても、あるいは愛情が根底にあるからといっても、許されるものではありません。それは「暴力」です。暴力を受けたときはどうすればいいのでしょうか、どうやって防げばいいのでしょうか。子供たちのトラウマやこころのケアに詳しい武蔵野大学名誉教授の藤森和美さんにうかがいました。
受け取る側が嫌だと感じれば、それは暴力。傍観者が加害者になる場合も
10代の若者を取り巻く「暴力」にはどんなものがあるでしょうか。「殴る」「たたく」「蹴る」などの身体的暴力、「怒鳴る」「脅す」「無視する」といった精神的暴力のほかにも、児童虐待に含まれる性的虐待や、保護者が子供の面倒をみないネグレクト、さらに「嫌がらせ」「からかい」などのハラスメントも暴力だと考えられます。見知らぬ人から受ける場合もあれば、しつけや指導の名の下で立場を利用した身近な大人からふるわれるケースもあります。仲間同士の間で起これば「いじめ」と呼ばれる暴力になります。また、ネット空間での深刻な仲間はずれや悪口、陰口のような攻撃的な言葉など、新しいタイプの暴力も生まれています。
藤森さんによれば、暴力の範囲や被害の考え方は、時代や社会意識の変化とともに変わってきました。例えば、かつてはルールに反することをした際のしつけや指導として、体罰が行われることもありました。でも現在では、それは許されない暴力として考えられています。相手を傷つける意図や悪意はなくとも、受け取る側が嫌だと感じ、不快な感情を持てば、暴力とみなされるようになってきました。
また、暴力の現場を目にすることも、暴力の被害を受けたことになると考えられています。子供の前で、夫婦げんかをして家族に対して暴力をふるう場面を見せてしまうことも心理的虐待にあたります。さらに、いじめなどに対して傍観者の立場でいることも、「目撃した状況にこころを痛めて、傷ついてしまう被害者になる側面と、何も行動を起こさず黙認していたという意味で加害者になってしまう側面があります」と藤森さんは指摘します。
暴力は力による支配。大人になって深刻な影響が出る場合も
そもそも暴力はなぜいけないのか。それは力によって相手を従わせ、支配と服従の関係をつくり出すからです。暴力が怖いから相手に従ってしまうのは、人が生まれながらに持っている「人権」を侵害していることにほかなりません。幼いときからそうした暴力にさらされていると、力による支配が正しいことだと思ってしまい、成長してからも自分の意思を通すために暴力をふるうようになる「暴力・虐待の連鎖」につながります。
ほかにも、子供時代に受けた暴力被害が、こころとからだの成長に様々な影響を及ぼすことがわかっています。発育や思考力、記憶力などの認知能力の遅れ、人とのコミュニケーションがうまくとれない、感情のコントロールができない、自尊心の欠落などの結果、自傷行為や薬物の乱用・依存、摂食障害などにつながるだけでなく、脳卒中や心臓疾患などの病気になる確率が通常の2倍以上になるなど、早期の死のリスクを高めることもわかってきました。
自分が悪いとは思わず、信頼できる大人に相談を
暴力の大小にかかわらず、被害を受けてしまったら、「痛かった」「怖かった」という思いを、泣き寝入りせず相談することが大事です。常に暴力を受けるような環境にいると、自分が悪いと思いこんだり、暴力を受けたことを恥ずかしいと思ったりして、被害を言えなくなってしまうことがありますが、暴力を使って問題を解決しようとすることは、絶対に認められないと、まず知ってください。被害を受けたあなたに責任はありません。
犯罪につながるような場合は警察に通報、相談しましょう。ケガをしたときには必ず病院に行って診察してもらうことも必要です。自分たちだけで解決することは難しい場合が多いので、身近にいる親や学校の先生、スクールカウンセラーといった信頼できる大人に相談しましょう。可能であれば録音や録画で暴力行為の証拠を残しておくと、役に立つ場合があります。
夜の街やネット空間で優しい言葉をかけてくる大人にだまされて、さらに被害にあうケースもあります。「力で支配される経験を重ねてきた人は、優しくされるとすぐ信じてしまう傾向があります。悲しいことですが『見知らぬ人』の言葉を、すぐに信用してはいけません。まず疑ってかかることで自分の身を守ってください」と藤森さん。警察や東京都などの公的な機関にも匿名で利用できる電話相談やSNS相談があるので、ぜひ困ったときの選択肢にいれておいてください。
■親子のための相談LINE
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo//katei/linesoudan.html
■話してみなよ―東京子供ネット―
メッセージダイヤル(24時間受け付け)
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/jicen/annai/keriyougo.html
■警視庁「ヤング・テレホン・コーナー」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/shonen/young.html
まわりの空気に流されない意思の力を
身近なところから暴力をなくしていくために、どんなことが大事になるのでしょう。藤森さんは、嫌なことは我慢せず嫌だと言う勇気や、周囲の雰囲気に流されて自分の考えを曲げてしまわない意思の力を、自分のなかに育ててほしい、と助言します。
たとえば、「いじめ」はダメだけれど、仲間同士の「いじり」はギリギリOKと思っている人もいると思います。「いじって面白くしてあげている」「いじられキャラのほうがおいしい」といった考えもあるかもしれません。しかし、藤森さんの意見は「お笑いの芸人さんは仕事として、いじる役といじられる役が合意のうえ、お金をもらってやっていること。それと日常のコミュニケーションを同じにしてはいけません」というものです。
「いじる」「いじられる」の関係が固定化して、相手を見下しているような気持ちがあれば、それはもう、いじめ=暴力の一歩手前かもしれません。いじられキャラを続けていると、ストレスがたまって心身や行動に影響が出てしまうこともあります。すこしでも「不快だ」「やめてほしい」「嫌だ」と思うなら、我慢せず、その気持ちを相手に伝えることが大事です。
暴力やいじめの問題は人権の問題だと考える必要があります。相手の気持ちを想像し、お互いを人として尊重し、自分がされたら嫌なことをしない。自分は嫌だと思わないことも、ほかの人から「やめて」と言われたらやめる。周りの人たちも、その場の空気に流されず、自分の気持ちを大事にして「それ嫌だから、やめようよ」「さっきの大丈夫だった? 誰かに相談した?」と口に出せる関係をつくること。そうした力を身につけられるようみんなで考えていきましょう。