性感染症

性感染症、知ろう・防ごう

「性病」は誰でもかかる可能性がある、身近な病気

Interview
性のこと
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Profile
助産師、性教育YouTuber シオリーヌ
1991年生まれ。看護師・助産師として総合病院産婦人科や精神科児童思春期病棟で勤務したのち、現在は学校での性教育に関する講演や、性の知識を学べるイベントなどの講師を務める。YouTubeチャンネルでは、性の知識を気軽に学べる動画を配信している。

性教育YouTuberのシオリーヌさんは「性の話をもっと気軽にオープンに」を合言葉に、若い世代に向けて性にまつわる動画を数多く配信しています。チャンネル登録者数17.5万人、助産師として産婦人科で働いた経験もあるシオリーヌさんに、10代にとっても身近な「性感染症」について聞きました。

シオリーヌ インタビュー

 

自覚症状がないことも。大切なのは検査

――まず基本的な知識として、「性感染症」とはどういったものを指すのでしょうか。

性感染症とは、口の中・性器の内側などの「粘膜」どうしが接触したり、精液や腟分泌液などの「体液」に触れたりすることで広がっていく感染症のことをいいます。性交渉、いわゆるセックスによってうつることもあれば、キスやアナル(肛門)セックス、性器をなめるなどするオーラル(口)セックスなどで感染することもあります。「性病」と呼ぶ人も多いですが、性感染症と同じです。
「一緒にお風呂に入ったら感染するのか」などの質問を受けることもありますが、そういった感染経路はあまりないのかなと思います。ただ、例えば同じお風呂の椅子を使って感染するケースなどもごくまれにあるので、ゼロとは言い切れないです。主には性的な接触を通じて感染すると理解していただけたらと思います。

――どんな種類の病気があって、どんな症状が出るのでしょうか。

とてもたくさんの種類があるのですが、患者数が多いのはクラミジアや淋菌(りんきん)感染症などです。最近は梅毒の患者さんも増えていて、若い人の間でも広がっています。ほかにも尖圭(せんけい)コンジローマ、性器ヘルペス、HIVなど、本当に多くの感染症があります。
クラミジアや淋菌だとおしっこをするときに痛みがあったり、女性だったらおりものがいつもと違う色やにおいだったりします。あとは男女ともに、性器から出血することもあります。
みんなに知ってもらいたいのは、自覚症状が何もないケースがあるということです。最初は自覚症状がないけれど、気づかないまま何年も経ってしまうと、病気によっては将来不妊症になってしまうことがあります。また梅毒などは初め手足にブツブツが出た後、消えることもあります。「あ、治った」と思って放っておくと、からだの中で感染が進み、心臓や血管に影響が出ることがあります。
だから、早く見つけて治療することが、とても大切なんです。

性感染症にならないために

検査を受けることは相手への最大の愛情表現

――感染を早めに見つけるためにはどうしたらいいでしょうか。「もしかしたら感染したかも」と悩んでいる10代の子にアドバイスをお願いします。

まずは医療機関などで検査を受けてみることが大事です。そして何か性感染症にかかっているということがわかったら、きちんと治療することです。ほとんどの性感染症は早期発見・早期治療で治すことができますし、昔は命の危険にさらされる可能性のあったような感染症も、今では薬を飲んで症状が出ないようにコントロールできるようになっています。
そして、もし自分がかかってしまっていたら、パートナーに伝えて検査を受けてもらいましょう。自分だけが治っても、パートナーからまたうつされてしまい、感染を繰り返すいわゆる「ピンポン感染」になりかねません。

――10代の人の中には、病院に行くと保護者に知られてしまうので受診したくないという人もいると思います。パートナーにも、なかなか伝えづらいかもしれません。

全国の保健所では無料・匿名(名前を名乗らない)で性感染症の検査や相談が可能なところも多いです。ただし、検査ができる病気の種類や日時が保健所によって決まっていて、また、治療はできません。検査の中には、郵送のキットを使ってできるものもありますが、自分では正確にできない恐れもありますし、やはり病院など医療機関で診てもらうというのがベストだと思います。保険証を使うと、受診した病院名と診療費が保護者に通知されるのですが、もしも親に言いにくかったら、学校の保健室の先生や、親戚など身近で話しやすい大人に相談してみてはどうでしょうか。ひとりで抱え込まないでほしいなと思います。

性感染症にかかることは、決して特別なことではありません。いわゆる「遊んでいる人」だけがなる病気でもなく、一度でも性的な接触をしたことのある人なら誰でもかかる可能性のある病気です。だから、恥ずかしいと思わないでほしいです。
私の夫は、私とつきあい始める前に性感染症の検査を受け、感染していないことを知らせてくれました。「私のことをとても大切に思ってくれているんだな」と感じて、うれしかった。相手を大事にしているからこそ、検査をするんですよね。検査を受けることは相手への最大の愛情表現だし、かかってしまったときにきちんと伝えるのも、「あなたとの関係が大切だから」ですよね。

※検査について知りたいときは、こちらもチェック

・東京都性感染症ナビ
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/seikansensho/index.html
(性感染症の症状や予防方法、検査情報等がわかるサイトです)

・東京都HIV等検査予約センター
電話番号 050-3801-5309
受付時間 10:00~20:00(年末年始を除く)
(新宿東口検査・相談室、多摩地域検査・相談室等の検査予約ができます)

「性病」は誰でもかかる可能性

――性感染症にならないためにはどうしたらいいのでしょうか。

「性感染症予防の三原則」というのがあります。
一つは「NO SEX(ノーセックス)」。性行為をしない、性的な接触をしないということです。
二つ目は「SAFER SEX(より安全なセックス)」。コンドームを正しく使って性的な接触をすること。コンドームをきちんと使うことは、本当におすすめしたいです。一つ目の「NO SEX」は確かに感染することはないですが、だからといって性交渉がダメというわけではないんです。コンドームを使って安全にセックスすれば、感染を防ぐことができます。
そして三つ目は「STEADY SEX(特定の人とセックスをする)」。相手が感染していなければ感染することはありませんから、検査をしたうえでお互い感染していないパートナーとだけ性行為をしていれば、安全ですよね。

――性感染症はきちんと予防すれば感染は避けられるし、もしかかってしまったとしても、検査と治療で対応できるんですね。

私がこれまでにお会いした方の中にも、10代で感染し病気が進行してしまった人が何人もいました。なかには「自分が性病にかかっているなんて思いもしなかった」「こんなふうに入院しなければならないほどになるなんて」と話される方もいました。
性感染症は決して遠い世界の話ではないですし、かかっても引け目を感じる必要もないので、検査や受診に一歩踏み出してほしいですね。

Message

みんなへのメッセージ

性感染症は決して不誠実な人がかかるものではないですし、とても身近な病気です。
自分や大切な人の健康と安全を守るため、ぜひ正しい情報をみてくださいね。