スポーツでのケガとのつきあい方

スポーツで負ったケガと向き合うには

完治までどう過ごしたらいい?

SOS
ケガのこと

公開日:2024年11月7日

  • line 別ウインドウで開く
  • x 別ウインドウで開く
この記事でわかること
関連する診療科

整形外科では、ケガ、骨折、関節の痛み、手足のしびれや痛み、スポーツ外傷などの相談をできます。赤ちゃんから高齢者まで、どんな年齢の人でも受診できます。必要に応じてレントゲン検査や血液検査を受けることがあります。それぞれの病気に合わせた治療を受けられます。必要があれば整形外科とリハビリテーション科、両方で診療を受けられます。

部活や習い事などのスポーツでケガをしたとき、完治までどう過ごせばいいのでしょうか。治療やリハビリに加え、スポーツができない間の過ごし方など、普段の生活とは違う対処方法があります。

痛みや見た目だけでなく、検査でケガの内部もチェック

試合中にぶつかったり、練習中踏ん張ったときにすべったり……スポーツでケガをしたときにはまず応急処置が大切です。
スポーツで負ったケガ、いわゆる「スポーツ外傷」で多いのは主に三つ、「打撲」「捻挫」「肉離れ」で、いずれも応急処置が大切です。応急処置には「安静(Rest)」「冷却(Icing)」「圧迫(Compression)」「挙上(Elevation/患部を心臓より高い位置に)」の頭文字を取った「RICE(ライス)」が有効であることは、『ケガをしたときの対処法を知っておこう!』の記事で詳しく解説しています。
https://www.youth-healthcare.metro.tokyo.lg.jp/story/784

ケガの直後に適切な処置を取らなかったり、十分に完治しないままスポーツを再開してしまったりすると、ケガが重症化したり、後遺症が残ったりする恐れがあります。後遺症が残ると、ふとした動作のときに痛くなったり、力が入らなくなったりしてパフォーマンスが上がりにくくなります。特に肉離れは通常、完治に1、2カ月かかりますが、しっかりとした処置をしないとさらに長期化します。まずは整形外科を受診し、応急処置をしっかり受けるのが望ましいです。

医師はまず話を聞く「問診」、目で見る「視診」、手で触る「触診」でケガの重症度を調べます。さらに骨はX線で、靱帯や軟骨、腱はエコー(超音波検査)、MRIなどでケガの内部を確認します。そのうえで手術が必要なのか、固定して回復を待つのかを判断していきます。ギプスや装具は、医師の判断で必要に応じて使います。

そして長期的に治療を考えた場合、「RICE」に「保護(Protection)」と「固定(Stabilization)」の頭文字を加えた「PRICES」が重要になってきます。

スポーツ中にケガをした直後は、体内で興奮時に分泌されるアドレナリンというホルモンにより、通常よりも痛みを感じません。「まだできる」と考えて競技を続けてしまい、その日の夜や翌日にパンパンに腫れ上がって痛い……。こんな経過でケガがひどくなってしまうこともあります。さらなるケガ・損傷を受けないためにまずは競技をやめて患部を保護しましょう。

そしてからだの内部で壊れてしまった組織が治るまで患部を動かさず、時には1−2週間程度の期間、固定します。いくら腫れや痛みが引いても、組織が元に戻らなければ、完治とは言えません。そのままにしておくと別のケガを引き起こしたり、癖になって同じケガを繰り返したりする可能性もあります。壊れた組織をできるだけ元に戻すため、数週間、ときには数カ月の治療が必要になります。

「リハビリ」は回り道じゃない

ケガでうまく動かなくなった部分を回復させ、競技に復帰できるようにするためにはリハビリも欠かせません。リハビリの極意は「コツコツやること」です。
以前はリハビリというと温めたり電流を患部に流したりなどのメニューが多かったのですが、現在はその人ごとに合ったストレッチや適度な筋力トレーニングを行うことが大事とされています。

ケガをしているとその部分を使うことができませんが、リハビリで別の部分の筋肉を鍛えることで、使えない部分を補うこともできます。たとえば腰を痛めている人は腰に力を入れることができませんが、その上の肩甲骨周辺や股関節を柔軟にすることで、前かがみになるときに腰を深く折るのではなく、腕をぐっと伸ばして股関節で屈曲して物を取ることなどができるようになります。「ジョイント・バイ・ジョイント・セオリー」と呼ばれている理論で、ケガ部分の痛みを軽減することにもつながります。

ケガをしたことによって、それまで打ち込んできたスポーツをしばらく休まなければならなくなるかもしれませんが、別のスポーツならできる場合もあります。未経験のスポーツに挑戦することは、それまで使っていなかったからだの部位や筋肉を鍛えることにもつながります。そうすることで、いざ元のスポーツを再開したとき、ケガ以前よりもからだの機能を向上させ、パフォーマンスを高めることもできるのです。

ひとつだけのスポーツに打ち込むよりも、季節を変えて複数のスポーツに取り組むことは、精神的ストレスが軽くなり、長期的には技術で劣ることはないともいわれています。

治療期間は将来の選択肢を広げる時間にもなる

活躍するチームメートたちを横目に、頑張っていたスポーツをしばらく休まなければならなくなるのを、とてもつらく感じる人は多いのではないでしょうか。思うように競技ができない自分を責めてしまうこともあるかもしれません。

スポーツでケガをすることは、誰しも起こりうることです。トッププロ選手でも、ケガを完全に避けることは難しいです。まずは自分のからだをいたわることが大切で、自分に責任を感じる必要はありません。

また、多くの時間を割いてきたスポーツをしなくなることは、視点を変えれば、他のことへの可能性が広がることにもなりえます。勉強に打ち込むことで、自分の行きたい学校の選択肢が増えるかもしれません。スポーツ理論を勉強すれば、競技時の判断力や競技への理解力が深まることでしょう。ひとりでため込まず、コーチ、友人、保護者など信頼できる人に気持ちを打ち明け、復帰の時期については医師に相談しながら、ケガの治療期間を過ごしていきましょう。