こころが「モヤモヤ」してきたら

思春期の「モヤモヤ」の正体

思春期の「モヤモヤ」の正体は

「こころの不調」と向き合ってみよう

SOS
こころのこと
  • line 別ウインドウで開く
  • x 別ウインドウで開く
この記事でわかること
関連する診療科

小児科では、赤ちゃんから中学生ぐらいまでの年齢の人が、からだのこと、こころのこと、成長や発達のことについて相談できます。子どもの時に見つかった病気を、大人になってからも、長年にわたって小児科で診療をうける人もいます。こころのことについては児童精神科でより専門的な診療を受けることができます。予防接種(ワクチン)を受けることもできます。

精神科では、こころの症状や発達障害について診療を受けられます。長く続く気分の落ち込み、物事に集中できない、死にたくなる、衝動がおさえられない、といったことを相談できます。また、学校に行きたいのに行けない、リストカットなどで自分を傷つけたくなる、ネットやゲームから離れられず他のことができなくなる、市販薬などを大量に服薬したくなるなど、自分ひとりでは解決するのが難しいことへの手助けも受けられます。どんな年齢の人でも受診可能ですが、小学生、中学生、高校生は児童精神科を受診することで、より年齢や発達に合わせた専門的な診療を受けられます。医師や臨床心理士に自分の悩みや困りごとについて話すことができ、各種心理療法や必要があれば飲み薬の処方を受けられます。

友だちづきあいや勉強、家庭、恋愛のことなど、いろんなことが思ったように進まず、モヤモヤした思い、つらい気持ちを抱えてはいませんか。こんなはずではなかったのに、と一人で悩んではいませんか。気持ちが沈んでしまったり落ち込んだり。「こころのバランス」がどうしても保てなくなってしまったとき、どうしたら前向きな気持ちに戻れるでしょうか。一緒に考えてみましょう。

10代の5割超がこころに「モヤモヤ」

「メンタルヘルス」という言葉を、どこかで耳にしたことはないでしょうか。英語では「Mental Health」。文字どおり「こころの健康」、あるいは自分の気持ちを健全にコントロールできる状態を意味する言葉です。 自分の気持ちを健全にコントロールできているなら、多少の壁があっても目の前の課題に対処でき、どうしたら乗り越えられるかを考えることもできるでしょう。しかし、もし落ち込んでいたり、何かに失敗してやる気が出なかったりする状態が続くと、ストレスが重なり、こころがモヤモヤとして不調を感じるようになります。 さらにストレスが続くと、自分のことに自信が持てなくなり、生きていく意味や将来の可能性に希望を持てず、家庭や学校生活、職場といった生活空間のなかで生き生きとした時間が過ごせなくなってしまいます。こうなると、メンタルヘルスが健全な状態とはいえなくなってしまいます。 こうしたこころの「モヤモヤ」は、年代を問わず、誰にでも起こりうる症状です。厚生労働省によると、何らかのこころの病気で通院している患者は現在、国内に約420万人います。症状によってうつや不安症、統合失調症などに分類できますが、その症状には個人差があり、生涯を通じて5人に1人はこころの病気にかかるとも言われています。 10代はからだだけでなく、こころも成長して大人に近づく時期。学校生活を通じて人づきあいが多くなり、同時に、ストレスを感じたり悩んでしまったりする出来事が身の回りで増えてきます。その分、こころが傷ついてしまうリスクも高くなってくるのです。 日本赤十字社が2021年12月に調査したところ、高校生の27%が「自分に価値を感じない」「他の人から必要とされていない」と感じ、43%が自分の「こころ」の現状を「何もしたくない」「無気力な状態」と認識しています。人とのコミュニケーションや健全な人間関係を築くことについても、3割が「難しい」と思っているようです。 思春期の気持ちのモヤモヤは、誰にでも起こりうることです。熱が出たときや咳が止まらないときに内科や小児科などの病院にかかるように、メンタルクリニックという「こころの不調」に向き合ってくれる病院があり、専門医もいます。 しかし、こころの中がモヤモヤしてしまったことは、本人にとっては、やっぱり言い出しづらいのも確かなようです。日本赤十字社の調査によると、気持ちの悩みを保護者や学校の先生に打ち明けたり相談したりできている高校生は、それぞれ15%だけでした。モヤモヤした気持ちをだれかに伝えたり相談したりできず、孤独感を募らせ苦しんでいる実態が見えてきます。

「つらい」はこころのSOS

国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部長の松本俊彦さんは、次のように訴えています。松本さんも、こころの問題に向き合う専門医の一人です。 「10代は自立心が芽生え、育まれる年頃でもあり、反発心や親を頼みとすることへの抵抗感もあると思います。しかし、それでも、大人を頼ってほしい。自分に寄り添ってくれそうな大人を探してほしい」 誰にも言い出せずに苦しみ続け、孤独感を募らせた結果、自分で自分を傷つけてしまったり、薬を大量摂取してしまったりする極端な事例を、松本さんは数多く見てきたそうです。自殺という選択をしてしまう10代も少なくありません。 悲しい出来事ともたくさん向き合ってきた経験から、松本さんはこう感じるようになったそうです。 「『つらい』と感じることは、自分のこころが自分自身に投げかけている『黄信号』のSOSです。頑張りすぎだから、休まなきゃいけないよと言っているんです。自分を傷つけようと思ったり、現に傷つけたりした経験がある人は、すでに『赤信号』に近づいています。SOSは必ずだれかが受け止めてくれます。黄信号のうちに大人を頼ってください」 悩みを口にするのが難しいなら、保護者や先生に手紙を書いてみるのもいいかもしれません。学校の保健室をのぞいてみるのはどうでしょうか。身近な人に相談しづらかったり、あるいは身近に相談できる人がいなかったりする場合は、信頼できる専門家に相談できる窓口もあります。じかに会って相談するという方法でなくても、電話やメール、SNSで相談するという選択もできます。そこには、あなたに寄り添い、力になりたいと思っている人がいます。

東京都の相談窓口

〇とうきょう若者ヘルスサポート(わかさぽ)
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/sodan/wakasapo.html

〇東京都こころといのちのほっとナビ
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kokonavi/