自殺(生きるのがつらくなったら)

雨に濡れる人物 傘を差し出す手

「死にたい」「消えてしまいたい」……そんな気持ちを誰に伝える? どう応えたらいい?

どんな人でも、自殺に追い込まれる可能性が。あなたはひとりじゃない

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こころのこと
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この記事でわかること
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心療内科では、ストレスなど心理的なことが原因となって、からだの症状が出る「心身症」の診療を受けられます。具体的には摂食障害(拒食症や過食症)、過敏性腸症候群(ストレスによる便秘や下痢)、繰り返す頭痛、パニック障害(突然の息苦しさ、めまいなどが起こり、強烈な不安感におそわれる)などについて相談ができます。どんな年齢の人でも受診することができ、中学生や高校生ぐらいの年齢の人もたくさん受診しています。医師や臨床心理士に自分の悩みや困りごとについて話すことができ、各種心理療法や必要があれば飲み薬の処方を受けます。

精神科では、こころの症状や発達障害について診療を受けられます。長く続く気分の落ち込み、物事に集中できない、死にたくなる、衝動がおさえられない、といったことを相談できます。また、学校に行きたいのに行けない、リストカットなどで自分を傷つけたくなる、ネットやゲームから離れられず他のことができなくなる、市販薬などを大量に服薬したくなるなど、自分ひとりでは解決するのが難しいことへの手助けも受けられます。どんな年齢の人でも受診可能ですが、小学生、中学生、高校生は児童精神科を受診することで、より年齢や発達に合わせた専門的な診療を受けられます。医師や臨床心理士に自分の悩みや困りごとについて話すことができ、各種心理療法や必要があれば飲み薬の処方を受けられます。

「死にたい」「この世から消えてしまいたい」……そんな気持ちがこころのどこかに生まれてしまったら、あなたはどうしますか? あるいは友だちからそんな気持ちを打ち明けられたら、どう応えればいいのでしょう? どんな人でも一度は死にたいと思うほどつらい思いを抱えることがあるかもしれません。一緒に考えてみませんか。

新型コロナウイルス感染症が流行したとき、全国的に10代の自殺が増えました。東京都ではコロナ禍だった2021年の児童・生徒の自殺者数は61人で、2016年の約1.6倍という高い水準になるなど若年層の自殺者数は増加傾向にあります(※)。世代別に死因をみると10代、20代では「自殺」がトップです。ユース世代にとって自殺は決して他人事ではない深刻な状況になっています。

※警察庁「自殺統計」に基づき厚生労働省自殺対策推進室集計

コロナ禍での自殺増加については様々な要因が複雑に絡み合っていますが、精神科医の松本俊彦さんは、学校行事や部活動の中止や縮小、遊びに行ける場所などが失われたことが大きかったのではないかと考えています。

「『元気?』『きょうはいい天気だね』といった、何げない周囲との会話に、実は救われていたという人はたくさんいるように思います」

コップに水が満たされている 人物の姿が映っている

「悩みを相談したり、『しんどいよ』と助けを求めたりすることを恥ずかしい、かっこ悪いと思うかもしれないけれど、『しんどい』『死にたい』という気持ちを、誰かと分かちあえると、ちょっとだけ楽になれることはあります。そういう気持ちをちゃんと聞いてくれる人や場所があることを知っておいてほしいな」

信頼できる相談相手の見分け方

誰かに悩みを相談することや、自分の気持ちを正直に打ち明けることは、とても勇気のいることです。思い切って話したのに、「死にたいなんて言ったらだめだよ」と気持ちを否定されたり、見当違いに励まされたりして、失望してしまうこともありえます。特に家族や友だちなど、自分にとって大切な人に本当の気持ちを話すのは、なかなか難しい。忙しいのに悪いなと思ってしまったり、話したことで相手を悲しませたくないなと思ったりするからです。

そんなときは、家族でなくてもいいので、身近にいる信頼できる大人に相談しましょう。信頼できる相談相手はどうやって探せばいいのか。松本さんはその見分け方について、こう話します。

「普段から偉そうに、上から目線で『正論』しか言わない人、『俺たちの若いときは……』なんて武勇伝を語りたがる人は避けたほうがいいでしょう。自分の失敗談を話してくれるような人なら、悪くないかも。また、いきなり悩みを伝えるのではなく『最近眠れない』『食欲がない』など、ちょっとした相談をしてみてどんな反応をするか様子をみてみるのも一案です。決めつけずに話を聞いてくれる人なら、可能性があるかもしれません」

信頼できる大人が見つからなければ、SNSなどを使った相談窓口を利用するのも選択肢のひとつです。東京都の「相談ほっとLINE@東京」(https://lin.ee/EnSrqGv)では、毎日午後3時から午後11時まで、生きるのがつらいと感じたときの悩みを聞いてくれます。電話などで直接話すより、文字のほうがコミュニケーションしやすい人もいるでしょう。

ハートを支える複数の手

自分の気持ちをノートなどに書いてみるのも有効です。少なくとも言葉にすることで、しんどい気持ちを客観的にとらえて、自分を振り返ることができます。書くことで、しんどい気持ちが少しだけ楽になる場合もあります。いろいろな相談窓口や機関があるので、試してみるといいですね。大切なのは、すべての助言を受け入れる必要はない、ということ。自分に合ったものだけ「いいとこ取り」して少しでもつらさが減る方法を選びましょう。

声をかけ、話を聞いて、「一緒に」相談につなげよう

もし、友だちや家族など、身近な人から「死にたい」といった気持ちを打ち明けられたら、あるいは深刻な悩みを抱えている姿を見たときは、どうすればいいのでしょうか?

松本さんは、大切なことのひとつ目として、「『大丈夫?』『何かあった?』と言葉をかけ、話を聞いてほしいです」と言っています。

「死にたいということを誰かに伝えるということは、『死にたいくらいつらいけれど、そのつらさがほんの少しでも軽くなるならば、生きたい』ということ。その気持ちを『死にたいということは、生きたいという気持ちの裏返し』などと簡単にまとめてしまうと、『死にたいと言う人ほど死なない』『死ぬ気もないくせに』といった間違った考えにつながってしまうので、注意が必要です。『自殺はいけない』『周りのことも考えて』などと相手を責めたり、『気のせいだよ』などと否定したりせず、話を聞いてほしいのです」

大切なことのふたつ目は、話を聞いた上で「一緒に相談に行こう」と信頼できる大人や専門家に助けを求めることです。

自分たちだけで抱え込んでしまうと、しんどい思いが伝染し、深刻な結果になってしまう場合があります。

友だち同士だったら、「親や先生には絶対に秘密にしてほしい」と頼まれるかもしれません。そうだとしても、「私だけでは解決できないかもしれない。だから一緒に信頼できる大人を探そう」と、一緒に助けを求めましょう。SOSを出し、助けを求めることは、相談を受けたあなたが弱いからでも、頼りないからでもありません。これは、つらい本人のみならず、支える周囲の人たちも同じです。

大切ないのちに関わる問題なので、家族や学校に伝わってしまうことは避けられない場合があります。それでも、信頼できる人ならば、どうして親や先生に知られたら困るのか、当事者の気持ちにちゃんと耳を傾けてくれて、一番よい方法を一緒に考えてくれるはずです。しんどい思いを抱える人や寄り添っている人の思いに応えてくれる人は必ずいます。

〇東京都こころといのちのほっとナビ~ここナビ~
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https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kokonavi/