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小児科では、赤ちゃんから中学生ぐらいまでの年齢の人が、からだのこと、こころのこと、成長や発達のことについて相談できます。子どもの時に見つかった病気を、大人になってからも、長年にわたって小児科で診療をうける人もいます。こころのことについては児童精神科でより専門的な診療を受けることができます。予防接種(ワクチン)を受けることもできます。
心療内科では、ストレスなど心理的なことが原因となって、からだの症状が出る「心身症」の診療を受けられます。具体的には摂食障害(拒食症や過食症)、過敏性腸症候群(ストレスによる便秘や下痢)、繰り返す頭痛、パニック障害(突然の息苦しさ、めまいなどが起こり、強烈な不安感におそわれる)などについて相談ができます。どんな年齢の人でも受診することができ、中学生や高校生ぐらいの年齢の人もたくさん受診しています。医師や臨床心理士に自分の悩みや困りごとについて話すことができ、各種心理療法や必要があれば飲み薬の処方を受けます。
精神科では、こころの症状や発達障害について診療を受けられます。長く続く気分の落ち込み、物事に集中できない、死にたくなる、衝動がおさえられない、といったことを相談できます。また、学校に行きたいのに行けない、リストカットなどで自分を傷つけたくなる、ネットやゲームから離れられず他のことができなくなる、市販薬などを大量に服薬したくなるなど、自分ひとりでは解決するのが難しいことへの手助けも受けられます。どんな年齢の人でも受診可能ですが、小学生、中学生、高校生は児童精神科を受診することで、より年齢や発達に合わせた専門的な診療を受けられます。医師や臨床心理士に自分の悩みや困りごとについて話すことができ、各種心理療法や必要があれば飲み薬の処方を受けられます。
気持ちがひどく落ち込んだり、身の回りで起きていることや世の中のことに興味を持てず、「どうでもいい」と感じてしまったりすることって、だれにでもありそうなことです。ただし、長い期間、暗い気持ちが晴れず、食欲がなくなったり、人と触れ合うのが面倒になって引きこもりがちになったりするなど生活まで変わってしまったなら、それは「うつ病」かもしれません。「うつ病」は誰でもかかりうるものです。どんな病気でどう治療すればよいのかをしっかり知っておく必要があります。
「うつ病」ってどんな病気? 聞いたことはあるけれど・・・
「うつ病」の原因は、医学的にはセロトニンやノルアドレナリンという脳内ホルモンの減少によって起きる病気とされています。これらのホルモンは気持ちを落ち着かせたり、やる気を引き出したりする作用があり、不足すると気持ちが落ち込んだり、やる気が出なくなったりしてしまいます。
気持ちが落ち込むと、頭痛や肩こり、めまい、腹痛、寝つきの悪さや目覚めの悪さなど、症状が体の不調として表に出てくることもあります。悪化すると、気持ちのコントロールができなくなって急に粗暴になったり、逆に引きこもりがちになったり、「リストカット」といった自傷行為につながってしまうこともあります。
ただ、症状がわかりやすい自覚症状を伴って表面化しないことも多く、気持ちの落ち込みを病気だと診断するのは簡単ではありません。症状ごとに原因や治療法も違い、個人差ももちろんあります。ただし、気持ちが落ち込んでいるなら、「ストレスでこころやからだがまいっているので、しっかり休む必要がある」ということは共通しています。
厚生労働省は「うつ病」かどうかを判断する「うつ状態」の典型的な症状について、次のようなチェックリストを公表しています。このリストの①か②を含む5つ以上の症状が2週間以上続いていないでしょうか?まずは確認してみてください。
①悲しく憂うつな気分が一日中続く
②これまで好きだったことに興味がわかない、何をしても楽しくない
③食欲が減る、あるいは増す
④眠れない、あるいは寝すぎる
⑤イライラする、怒りっぽくなる
⑥疲れやすく、何もやる気になれない
⑦自分に価値がないように思える
⑧集中力がなくなる、物事が決断できない
⑨死にたい、消えてしまいたい、いなければよかったと思う
(厚生労働省「こころもメンテしよう」より抜粋)
小学校高学年の3割、中高生の5割に「うつ状態」の症状
ふたつ大切なことがあります。
まずひとつ目は、①から⑨のような「うつ状態」は、大人でも子供でも、誰にでも起こりうるということです。気持ちが落ち込む原因はさまざまですが、決して珍しいことではありません。
国立成育医療研究センターは2021年12月、全国の小学生、中学生、高校生を対象に調査をしました。その結果、小学校4~6年生の10%、中学生の22%、高校生の23%の子供に、軽度とはいえない「うつ状態」の症状があることがわかりました。
①から⑨のような症状があってもすぐに「うつ病」とは診断できませんが、この調査結果からも、気持ちが落ち込む症状が特別な異常ではないことがわかると思います。
改善できる。専門医は心強い味方。安心してその扉をたたこう
大切なことのふたつ目は、「うつ状態」や「うつ病」はしっかりと治療すれば、症状を改善できるということです。精神科医の松本俊彦さんはこれまで、こうした症状で苦しむ多くの子供たちと向き合ってきました。その経験から、「例えば学校に行く時間に頭痛や腹痛になったり、疲れているのに夜眠れなかったりすることが続いているのであれば、それはこころとからだが悲鳴を上げているサインです。自分の努力の問題でもないし、がまんすれば解決するものでもありません。風邪を引いたらしっかりと休んで、症状がひどければ病院に行く。これは気持ちが落ち込んだときも同じです。まずはしっかり休むことが大切で、休んでも改善されない場合は、身近な人に相談したり、病院を受診したりしてほしい」と話します。
「うつ病」は、症状がはっきりせず自覚も難しいなら、他人に相談しても理解してもらえないと思うかもしれません。たしかに、だれかに相談することは勇気が必要なものです。国立成育医療研究センターの調査でも、気分が落ち込むことが続いたとき、中学生と高校生の半数が「だれにも相談せずにしばらく自分で様子をみる」と回答しています。
ただ、自分の苦しさをだれにも打ち明けられずに様子見を続けていると、症状の悪化につながるリスクが高まります。日々の生活に支障が出たり、自分で自分を傷つけてしまったりする前に、専門家に相談したり、病院で診てもらったりする選択肢があることを知っておいてください。
「うつ病」の診断や治療を専門的に行う診療科は「精神科」や「心療内科」です。
「精神科」や「心療内科」というと、なんだか暗いイメージを感じるかもしれませんが、決してそんなことはありません。そこにはみなさんのこころの声をしっかりと聞いて、解決策を一緒に考えてくれる専門医がいます。専門医は、カウンセリングという方法で、皆さんの苦しさをしっかりと受け止めながら原因を探りつつ、不安な気持ちを抑えるための薬を検討してくれるなど、症状に応じた治療を提案してくれる強い味方です。専門医の力を借りることで、苦しい気持ちを少しでも早く解消していきましょう。