HPVワクチンはあなたを守るだいじな選択肢

ねえ、きのう区役所から封筒が届いたんだけど、ヒロトくんのところにも来た？

いや？　特に何も来てないけど。

やっぱりそうなんだ。「HPVワクチン」って書いてあって。「子宮頸がん」の予防接種のお知らせみたいで。「子宮」だから女子だけなのかな。

「HPVワクチン」って聞いたことあるよ。子宮のがんを防ぐなら、男子は関係ないんじゃない？

大事なこと、曖昧模糊なままにさせない！ HPVワクチン、まだまだ知られていないよね！

出た！　あやふやなことをハッキリ教えてくれるモコフカちゃん！

そもそも、HPVって何か知ってるかな？

知らない。

HPVとは、「ヒトパピローマウイルス」のこと。1980年代にドイツの学者によって、子宮頸がんの原因のほとんどがHPVの感染によることが発見されたんだって。

そうなんだ。

HPVは200種類以上ある。感染してがんの原因になるのは15種類ほどと言われている。 その15種類は主に性行為＝セックスを通じて感染するんだけど、HPV自体は性交経験のある女性の8割近くが一生に一度は感染するくらい、ありふれたウイルスなんだ。

えっ！

うん。でも子宮頸がんの場合、がんになって進行していくのがすごくゆっくりだから、感染したからといってすぐに必ずがんになるわけではない。定期的に検診を受けて、早くがんを見つけて治療することができれば、90％以上が助かることがわかっているんだ。
そうは言っても、感染しないのが一番だよね？
だから性行為を経験する前に、HPVワクチンを接種するのがいいと言われているんだ。

ふーん。わかったけど「子宮」のことだから、やっぱり男子は関係ないんじゃないの？

ちょっと待った！　HPVは子宮頸がんを引き起こすだけじゃないよ。男性に感染した場合、陰茎（いんけい）がん、すなわちペニスのがんや、肛門がん、咽頭（いんとう＝のど）のがんを引き起こすこともある。
それに、パートナーから感染したり、感染させたりすることもある。
海外では男性へのワクチン接種をすすめている国もあり、日本でも検討されているんだよ。

ぼくのところにはお知らせが来ていないけど。

HPVの感染を防ぐためのワクチンは現在、女性は法律に基づいて無料で受けられるものがあるけれど、男性はいまのところそうした接種の補助の対象になっていないところがほとんどなんだ。

そういえば思い出した。お母さんが「HPVワクチンは心配」って言ってたこと。だから私に受けさせていないのかな……。

お母さんがそう思うのには理由があるモ。今から10年くらい前、「ワクチンを接種したせいで体が痛くなった」「歩けなくなった」などの声が上がり、ワクチンを怖がる人も出てきた。そこで、接種を受けたい人は受けられるけれど、国から「ぜひ受けましょう」と積極的に言うのをやめていた時期があるんだ。

それ怖いんだけど。

ううん。その後、国が専門家を集めた審議会で、そういった痛みや症状と、ワクチン接種との関係を調査研究したけれど、ワクチンの安全性については特段、心配があるとは認められないとの結論になった。
だから、国は積極的に接種を受けるようすすめることを再開したんだ。すすめていなかった期間にワクチンを受けていなかった人は、2025年3月まで、対象年齢を過ぎても無料で接種してもらえるんだ。アカリちゃんは高校2年生だから、その対象かな。
もちろん、受けるか受けないかは自分とご家族で決めることだけれど、むやみに怖がる必要はないモ！　もし接種することに決めたら、なるべく早めの接種がより有効とされているよ。

わかった。私HPVワクチンのことほとんど知らなかったから、まずは調べることから始めてみるよ。モコフカちゃん、ありがとね。

ネットで調べるなら、厚生労働省や東京都などのオフィシャルなサイトを見てみてモ！　かかりつけ医や保健所に相談もできるし、実際接種したお友だちに話を聞いてみるのもいいよ！