男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を行うようにうながす「プレコンセプションケア」を知っていますか? 妊娠について考えたことがない人も、まずは自分の健康からチェックしてみよう。
いつもの帰り道、いつものように、たわいない会話をしていた2人。アカリが突然、ドキッとするような質問をしたから、ヒロトは思わず顔を赤くしてしまって……。 
妊娠? 子供? 想像できないけれど……
えっ!?(いきなりそんなこと聞くの?)。えーと、まだわかんないな〜。
私も全然わからない。赤ちゃんは好きなんだけど、自分が妊娠したり子育てしたりするのは、イメージができなくて。作文の課題が「10年後のわたし」で、何を書いたらいいのか、まだ決まっていないんだ。
あっ、そういうことか(めっちゃ焦ったし!)。26、7歳くらいだよね。リアルな話、どんな仕事をしていて、どれだけ収入があるかも関係してくる気がする。
あんまり将来の心配ばかりしたくないよね! でも、妊娠して子供を産むことって、どれぐらい意識すればいいのかな?
大事なこと、曖昧模糊なままにさせない! ふたりにもっと知ってほしい、将来子供を持つ可能性のある人にとって大切な「プレコンセプションケア」のこと……!
コンセプション(Conception)とは「受胎・妊娠」という意味。だから、プレ(前)コンセプションケア(Preconception Care)は、妊娠する前の健康管理などのケアのことなんだ。
妊娠した時は健康管理が大切なのはわかるんだけど、中高生にはまだ早いんじゃないの?
いや、妊娠する前の時期から、自分やパートナーが将来妊娠するかもしれないことを考えて、性別を問わずに自分の健康に向き合うのがプレコンセプションケアだと思うんだモ!
けれど、子供を産まないって決めている人も多いと思う。
うん、性のあり方や社会の状況によっては、子供を持つと望むこと自体、難しいと感じている人もいるかもしれないね。 大事なのは、そもそも子供をいつ産むか、何人産むか、あるいは産まないのかは、自分たちで決めるものだということ。これから自分自身がどうしたいか考え、パートナーとも話し合っていってほしいモ! それと同時に、今の気持ちだけにとらわれることなく、将来の気持ちや環境の変化の可能性も考えて、自分自身の健康を考えてほしい!
健康的な生活習慣と感染症予防から始めよう
親や周りに決められるのではなくて、自分で決める権利があるんだね。考えることがいろいろあって大変だね。
なんか、人ごとみたいな言い方……。男子も関係あるよね?
男性もプレコンセプションケアとしてできることがあるモ! 不妊症の原因の約半数が、男性にあると言われているよ。老化や生活習慣によって精子の数が減ったり運動率が落ちたりすると、妊娠しにくい方向に進むから、男性もライフプランを考えたり健康管理をしたりすることが大事。男性は妊娠や出産の当事者として、パートナーと一緒にケアを心がけていく必要があるよ。
たしかに人ごとみたいに考えていたかもしれない……女性だけの問題じゃないんだね。具体的にはどういうケアをすればいいの?
生活習慣に関わるものが多くて、基本的には健康的な生活を送ること。主に6つの習慣が挙げられるんだ。
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- 今すぐできる代表的なプレコンセプションケア
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- 適度に運動をする
- バランスよく栄養をとる
- 生活リズムを整える(睡眠など)
- ストレスをためない
- たばことお酒に注意
- 感染症を予防する(ワクチン接種、性感染症の予防など)
「運動」「栄養」「生活リズム」「ストレス解消」は、自分自身が健康でいるために基本となること。学校を卒業した後も、定期的に健康診断を受ければ自分の健康状態をチェックできるよ。栄養に関しては、妊娠前の女性にはビタミンの一種である葉酸が必要だと言われているけど、普段から緑黄色野菜を食べる習慣をつけておいたほうがいいモ。
大人になってからの「たばことお酒」のとりすぎもよくないんだね。
うん、そうだね。妊娠には、卵子・精子ともに数と質がとても重要なんだけど、たばこは、卵子や精子に悪影響を及ぼすんだ。受動喫煙などでパートナーや胎児にも悪い影響があるから気を付けないといけない。
「感染症の予防」は、性感染症の検査や治療をしっかり受けるだけでなく、子宮頸がんを予防するためにHPVワクチンを接種しておくことも有効なんだ。
ほかにも、風しん(風疹)は妊娠中に感染すると、胎児に影響を与えるリスクがあるよ。おたふくかぜも不妊の原因になる可能性がある。これらの感染症にかかった経験があるか、ワクチンを接種しているかは、今のうちから確認したほうがいいモ!

「正しい知識をつけること」がプレコンセプションケアの第一歩
プレコンセプションケアって難しそうと思ったけど、普段から健康的な生活を送っていれば簡単にできそうだね!
10代の私たちが特に気をつけておいたほうがいいことって、何かな?
まず第一歩は、「正しい知識をつけること」。妊娠とは何か、性感染症はどんなリスクがあるかといったことを、自分が当事者ではなくても、あらかじめ知っておいてほしいんだモ!
知っているつもりでも知らないことは、まだまだ多いような気がする。
プレコンセプションケアが推奨されているのは、望んでいてもなかなか妊娠できないカップルがいるという背景もあるんだ。ワクチンで感染症を予防したり、栄養のとり方に気をつけていたりすれば、赤ちゃんの生まれつきの病気を防げることもある。そういう事実もいろいろ知ってほしい。例としてデータを紹介するけど、卵子や精子の数が年をとるにつれて減っていくことを知ってる?
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- 卵子と精子の数のデータ
- ●年齢による卵子の数の推移
●男性の精子の数の変化 
卵子の数の減り方によっても、妊娠できる年齢には限界があるんだね。もっといろんなことを教えて、モコフカちゃん!
わかったモ! 卵子や精子の数だけじゃなくて、からだの状態も妊娠できるかどうかには影響しているんだモ!
だからまずは、自分自身の健康に向き合うことが大切。ほかにもまだまだ知ってほしいことはあるけど、これから食事と運動の時間だから、また来るね。じゃあね〜!(ピカーッ!)

また消えた……。食事って、何を食べているんだろう。
モコフカちゃんも、健康的な生活習慣を送りたいってことじゃない?
そうだね。知りたいことは、とりあえず自分たちで調べてみようよ。そこで曖昧模糊になった時に、モコフカにまた会えるはずだから。
※栄養やプレコンセプションケアに関する相談は、お住まいの地域の保健センターでも受け付けています。
■東京23区
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kenkou/shisetsu/kuho_list.html
■東京都内の市町村
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kenkou/shisetsu/shiho_list.html